実家で長年一緒に暮らしてきたペットが旅立ったとき、悲しみの中でも「仕事はどうすればいいのか」という現実的な問題が頭をよぎります。自分が同居していない場合、職場への伝え方や休み方に迷う方は少なくありません。この記事では、実家のペットが亡くなった場合の仕事上の対応を、制度の仕組みとあわせて整理します。
忌引き休暇の対象になるかどうか、有給休暇の使い方、職場への伝え方、そして離れた場所から後日できる供養の手続きまで、順を追って確認していきましょう。手続きの細かい条件は会社や自治体によって異なるため、不明な点はご自身の就業規則や担当窓口で確認されることをおすすめします。
気持ちの整理がつかないまま職場に連絡しなければならない状況は、思いのほか体力を使います。まずは「何を決めればよいか」を把握することが、最初の一歩になります。
実家のペットが亡くなったとき、仕事を休めるのか
「忌引きが使えるかどうか」という疑問は、実家のペットが亡くなった場合にもっとも多く出てくる問いです。結論と制度の仕組みをここで整理します。
忌引き休暇の対象範囲とペットの位置づけ
忌引き休暇は、労働基準法などの法律で義務づけられた制度ではなく、各会社の就業規則によって定められる任意の福利厚生です。一般的な就業規則では、配偶者・子・父母・祖父母・兄弟姉妹など三親等以内の親族が対象とされています。
ペットは法律上「物(動産)」に分類されており、戸籍や親族関係のある存在ではないため、多くの会社では忌引き休暇の対象外となっています。感情的なつながりがいかに深くても、制度上の親族には該当しないのが現状です。
また「実家のペット」は、自分が現在同居しているわけではないため、仮にペット忌引きを導入している会社であっても、同居要件がある場合は対象外となることがあります。就業規則を事前に確認しておくとよいでしょう。
ペット忌引きを導入している会社はあるか
近年、福利厚生の充実を図る企業の一部が、ペット忌引き制度を導入し始めています。アイペット損害保険株式会社やユニ・チャーム株式会社など、同居ペットが亡くなった場合に数日間の特別休暇を付与する例があります。
ただし、こうした制度を設けている企業はまだ少数です。アイペット損害保険株式会社の事例では「同居しているペット1頭につき3日間」という要件が設けられており、実家のペットには適用されない可能性が高いです。
自分の会社にペット忌引き制度があるかどうかは、就業規則の休暇欄または人事担当部署に確認するのが確実です。制度の有無と、実家のペットが対象になるかどうかの2点をあわせて確認しておくとよいでしょう。
有給休暇を使って休む方法
忌引きが使えない場合、最もスムーズな方法は年次有給休暇の取得です。労働基準法第39条に基づき、入社後6か月以上勤務し一定の出勤率を満たした労働者には有給休暇が付与されます。理由を問わず取得できるのが有給休暇の原則ですが、事前申請や繁忙期の調整など、社内のルールに沿った手続きが必要です。
急な連絡が必要な場合でも、できるだけ早い段階で上司や人事に申し出ることで、業務の引き継ぎをスムーズに進められます。有給休暇の残日数が少ない場合や入社間もない場合は、欠勤扱いになることもあるため、事前に状況を把握しておくとよいでしょう。
・忌引き休暇:多くの会社では対象外(就業規則による)
・ペット忌引き制度:導入企業は少数、同居要件がある場合が多い
・有給休暇:理由を問わず取得可能。急な場合も早めに申請を
・欠勤:有給がない場合の選択肢。無断欠勤は避ける
- 忌引き休暇の対象は就業規則で異なるため、まず規則を確認する
- ペット忌引き制度がある会社でも、実家(別居)のペットは対象外の場合がある
- 有給休暇は取得理由を問わないのが原則で、最も使いやすい手段
- いずれの場合も、なるべく早めに職場へ連絡し、引き継ぎの段取りを整える
職場への伝え方と気をつけたいポイント
ペットが亡くなったことを職場に伝える際、どのように説明するかで職場の反応が変わることがあります。感情的に伝えることが難しい場面でも、いくつかの基本を押さえておくと負担が軽くなります。
伝えるべきかどうかの判断
ペットの死を理由に休む場合、職場への説明は必須ではありませんが、上司への連絡は必要です。有給休暇を取得する場合、理由を詳細に伝える義務はありませんが、「私用のため」や「家族の件で」と伝えるのが一般的な対応です。
ペットが亡くなったことを正直に伝えることに抵抗を感じる方もいますが、職場の雰囲気や上司との関係性によっては理解を得やすいケースもあります。無理に詳細を伝える必要はなく、状況に応じて判断してよいでしょう。
重要なのは、休む理由よりも「いつから何日休むか」「業務の引き継ぎをどうするか」を明確に伝えることです。相手が必要としている情報を先に伝えると、やり取りがスムーズになります。
連絡のタイミングと手段
ペットが亡くなった翌日や当日に休む必要がある場合、電話での連絡が基本です。メールやチャットツールだけでの連絡は、緊急性や真意が伝わりにくいため、まず電話で伝え、必要に応じて補足をテキストで送るのが望ましいでしょう。
連絡は始業前の早い時間に行うのが基本です。上司が不在の場合は、代理の担当者や職場の窓口に連絡し、折り返しを依頼しましょう。精神的につらい状況の中での電話は負担が大きいですが、業務への配慮という意味でも早期連絡が大切です。
実家のペットという状況での注意点

実家のペットの場合、自分が直接お見送りや火葬の手続きに関わることができないケースもあります。それでも精神的な打撃が大きい場合は、無理をせず休むことを選んでよいでしょう。
一方で、「自分が同居していたわけではない」という状況に対して職場の理解を得づらい場面もあります。その場合も、感情論ではなく「体調が優れない」「家族の件で対応が必要」などの表現で対応することが、職場との関係を保つうえで現実的な選択肢になります。
・連絡は電話で、始業前の早い時間に行う
・「いつから何日」「引き継ぎをどうするか」を明確に伝える
・詳細な理由は状況に応じて判断してよい
- 有給休暇の取得に詳細な理由説明は不要
- 「いつ」「何日」「引き継ぎの有無」を先に伝えると連絡がスムーズ
- 実家のペットであることを強調せず、「家族の件」などの表現でよい場合もある
- 精神的につらい場合は、無理をしない選択も正当な判断
離れた場所からできる手続きと後日の対応
実家のペットが亡くなった場合、火葬や手続きを実家の家族に任せる場面も多くあります。遠方にいながらできることと、後日実家に戻った際に確認しておくべきことを整理します。
火葬・遺骨の手続きは誰が進めるか
ペットの火葬は、法律上の義務はなく、自治体への届出義務も一般的には定められていません。ただし、遺体の取り扱いについては、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)の規定が関係する場合があり、公道や公共の場所への無断埋設は禁止されています。詳細な取り扱いについては、お住まいの自治体の担当窓口にご確認ください。
火葬の手配は実家の家族が行うことが多いですが、遠方からでも電話やオンラインで業者への問い合わせや日程調整に関わることができます。合同火葬か個別火葬かの選択、遺骨の引き取り方法についても、家族間で事前に話し合っておくとよいでしょう。
遺骨の扱いと後日の選択肢
火葬後の遺骨は、返骨(個別に遺骨を受け取ること)または合同供養(業者や寺院で合祀)のいずれかになります。後日実家に帰った際に遺骨と対面できるよう、実家の家族に個別返骨を依頼しておくことで、離れていても後からお別れの時間を持てます。
遺骨は自宅での保管(手元供養)や、ペット霊園への納骨、散骨など、さまざまな形で供養できます。全国ペット霊園協会の案内では、合祀・個別収骨・永代供養墓など複数の選択肢が紹介されており、費用や規模もさまざまです。最新情報は全国ペット霊園協会の公式サイトでご確認ください。
登録やマイクロチップに関する手続き
犬を飼っていた場合、死亡届の提出が必要になることがあります。狂犬病予防法に基づき、犬の登録をしている自治体では、死亡の届出が義務づけられています。手続きは実家のある市区町村窓口で行うため、実家の家族が対応することが一般的ですが、手続きの有無や方法は自治体によって異なります。
また、2022年6月1日以降に生まれたり販売されたりした犬・猫については、マイクロチップの装着と環境省のデータベース登録が義務化されています(環境省の動物愛護管理法の改正による)。ペットが死亡した場合は、データベース上での死亡登録の手続きが必要になります。詳しくは環境省の動物愛護管理ページをご参照ください。
| 手続きの種類 | 対象 | 窓口 |
|---|---|---|
| 死亡届(狂犬病予防) | 登録済みの犬 | 市区町村窓口 |
| マイクロチップ死亡登録 | チップ登録済みの犬・猫 | 環境省の指定登録機関 |
| ペット保険の解約 | 加入していた場合 | 各保険会社 |
| 火葬・供養の手配 | すべてのペット | 火葬業者・ペット霊園 |
- 犬の場合は市区町村への死亡届が必要(狂犬病予防法)
- マイクロチップ登録がある場合は死亡登録の手続きが必要
- ペット保険に加入していた場合は、契約内容に応じて解約・死亡給付の手続きを行う
- 遺骨の引き取り方法は火葬前に家族間で確認しておく
実家のペットを失った後の気持ちとの向き合い方
自分が同居していなくても、幼い頃から家族の一員だったペットを失う悲しみは深いものです。遠方にいることで「何もできなかった」という気持ちが重なりやすい状況でもあります。
離れて暮らしていたことへの罪悪感
実家のペットが亡くなった際、「最後に会えなかった」「もっと早く実家に帰っておけばよかった」という後悔を感じる方は多くいます。離れて暮らしていることへの罪悪感は、ペットロスの中でも特有の感情です。
こうした感情は、ペットへの深い愛情があるからこそ生まれるものです。罪悪感を無理に打ち消そうとするより、その気持ちを自然なものとして受け止めることが、気持ちの整理につながりやすいとされています。厚生労働省の公式ウェブサイトでは、こころの健康に関する相談窓口の情報も提供されており、必要に応じて活用できます。
仕事への影響とペットロスの関係
アイペット損害保険株式会社が2026年1月に公開した調査によると、ペットロスを経験した飼い主の7割超が仕事を休まなかったという結果が出ており、多くの人が仕事と悲しみを同時に抱えていることがわかります。集中力の低下、睡眠の乱れ、気力の消耗などが仕事に影響することは珍しくありません。
こうした状態が続く場合は、無理をせず休養を取ることが大切です。職場に詳細を伝えることが難しい場合でも、「体調が優れない」という表現で有給休暇を取得することは、正当な権利の行使です。精神的な不調が長引く場合は、かかりつけの医療機関や相談窓口への相談をご検討ください。
気持ちが落ち着いてからできること
後日実家に戻った際に、ペットのお骨と向き合う時間を作ることは、気持ちの区切りをつけるうえで助けになることがあります。お墓参りや手元供養の準備、家族と一緒に思い出を話すことなど、形にこだわらないお別れの方法があります。
写真や足形など、生前のメモリアルが残っている場合は、それを手元に置くことで気持ちの拠り所になります。喪失の気持ちは一度で整理できるものではないため、自分のペースで向き合うことが大切です。
・「最後に会えなかった」という後悔は、愛情の深さのあらわれ
・仕事への影響が続く場合は、休養を優先してよい
・後日でも、遺骨との対面や家族との時間がお別れの機会になる
・長引く不調は、相談窓口や医療機関に頼ることも選択肢
- 離れて暮らしていたことへの罪悪感は、ペットロスに特有の感情として自然なもの
- 集中力の低下など仕事への影響が続く場合は、有給休暇や相談窓口の活用を考える
- 後日でも、遺骨との時間や家族との話し合いが気持ちの整理につながることがある
- 長引く精神的な不調は、早めに医療機関や支援窓口に相談するとよい
ペットロスと職場の理解、これからの制度の方向性
ペットを家族として見る価値観が社会に広まる中で、職場のペットロスへの対応も少しずつ変化しています。現状の制度と今後の傾向を整理します。
企業のペット休暇導入の動向
厚生労働省が公開している事例集でも、ペット忌引き休暇の導入企業が紹介されています。同居ペットが亡くなった場合に1日の特別休暇を付与する制度が一例として示されており、働き方改革や多様な家族形態への対応として注目されています。
ただし、制度の普及はまだ限定的で、実家のペットを対象とする例はさらに少ないのが現状です。制度の有無、対象の条件(同居・飼育者本人かどうか)はそれぞれ異なるため、自社の就業規則で確認することが基本になります。
職場でのペットロスへの理解を得るために
職場でペットロスへの理解を得るためには、感情的な訴えよりも、業務への影響と対応策をセットで伝えることが効果的です。「〇日休みたい」「業務はこのように引き継ぐ」という形で伝えると、職場側も対応しやすくなります。
アイペット損害保険株式会社の調査では、ペットロスを経験した人が職場に望むこととして、「柔軟な働き方の許容」(31.8%)、「社内のペットロスへの理解」(30.1%)、「休暇取得できる制度」(29.6%)が上位に挙がっています。こうしたデータが職場内での制度検討の参考になることもあります。
ペット保険や行政サービスとの連携
ペット保険に加入していた場合、死亡時の手続きは各保険会社の約款に基づいて行います。保険会社によって、死亡診断書の提出が必要な場合や、手続き期限が定められている場合があります。契約内容の確認は早めに行うことをおすすめします。
ペットの死後に発生する行政上の手続きについては、自治体の環境・動物管理担当窓口が相談先になります。特に犬の死亡届や、マイクロチップの死亡登録は、実家のある市区町村または環境省の指定登録機関への連絡が必要です。最新の手続き方法は、環境省動物愛護管理ページや各市区町村の公式サイトでご確認ください。
| 職場への対応 | 内容 |
|---|---|
| 就業規則の確認 | 忌引き・ペット休暇制度の有無と条件 |
| 有給休暇の申請 | 理由を問わず取得可能(社内手続きに従う) |
| 連絡の方法 | 電話で早めに、「いつ・何日・引き継ぎ」を明確に |
| 伝える内容 | 詳細は状況次第。「家族の件」などの表現でも可 |
- ペット休暇を導入する企業は増えているが、実家のペットを対象とする例は少ない
- 職場への連絡は、業務への影響と対応策をセットで伝えると理解を得やすい
- ペット保険の解約手続きは早めに行い、期限を確認する
- 行政手続きは実家のある自治体窓口に確認するのが基本
まとめ
実家のペットが亡くなった場合、忌引き休暇は多くの会社では対象外ですが、有給休暇を活用することで正式に仕事を休むことができます。職場への連絡は早めに、業務の引き継ぎをあわせて伝えることがポイントです。
まずは自分の会社の就業規則でペット休暇や有給休暇の条件を確認し、休む日数と引き継ぎの段取りを決めるところから始めてみてください。
大切なペットのお見送りは、離れていた時間の長さに関わらず、あなたにとって意味のある時間です。焦らず、自分のペースで向き合っていただければと思います。

